恋なんてしないと決めていたのに、冷徹御曹司に囲われ溺愛されました
 歩が「うん」と返事をすると、私も弟の手を握った。
「社長、私もお供します」
 笑って言って三人でホテルに入ると、正面に八メートルはありそうな大きなクリスマスツリーがあった。
 床は真っ赤でふかふかの絨毯。天井にはシャンデリアが眩いばかりに輝いていてあまりの豪華さに日常を忘れる。
「うわあ、大きい」
 巨大クリスマスツリーを前に歩は目を大きく見開いて驚く。
「こんなキラキラしてて大きいツリー初めて見たね」
 私が歩にそう言葉をかければ、絢斗も小さく笑って言った。
「さすがにこんな大きいのはうちにおけないな」
「うん。うちのマンションに突き刺さっちゃうね」
 自分の頭で想像して楽しかったのか、歩がクスクス笑う。
 だが、私は弟が無意識に口にした言葉にハッとした。
 絢斗のマンションをうちのマンションって言った。
 絢斗も気づいたようで私を目が合うと、そっと微笑んだ。
「さあ、こっちだよ」
 絢斗の案内でエレベーターホールに向かう。
 
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