恋なんてしないと決めていたのに、冷徹御曹司に囲われ溺愛されました
個室は六畳ほどの大きさで、六人掛けの長テーブルが置かれている。
 私と歩が並んで座り、絢斗が向かい側の席に腰掛ける。
「実はもう料理は頼んであるんだ」
 歩が子供メニューというのもあるけど、私に値段を見せないようにする配慮なのかもしれない。
 テーブルにはフォークとナイフがセットされていて、歩がじーっと見つめてキラッと目を光らせる。
「ずっと使ってみたいって思ってたんだ」
 そうだよね。子供なら使ってみたいって思うよね。
 今まであまり外食させてあげなくてごめん。
 うちにフォークはあってもナイフはないしね。
「歩、ナプキンは膝に敷いてね」
「うん」
 私に言われた通りにする歩を見て、こういう大人な場所に連れて来ても安心だなって思った。
「歩、フォークとナイフは外側から使うんだよ」
 絢斗がそう弟に教えていたら、店のオーナーシェフが挨拶をしにきた。
 イブで忙しいのに挨拶に来るなんてさすが一条家の御曹司というべきか。
 
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