恋なんてしないと決めていたのに、冷徹御曹司に囲われ溺愛されました

　突然絢斗が現れて驚いたのか、峯岸さんが表情を強張らせた。
「近い将来美鈴と結婚する」
　彼は至極真面目な顔で婚約者の意味を彼女に説明する。
　私としては嬉しいけれど、まだ婚約してないのに公衆の面前でそんなことを言って大丈夫なのだろうか。
　ただのＯＬの私と違い、彼は副社長だ。
「結婚ってわかってる？　その子は私生児で、母親も他界していていない。その上、小さな弟がいるのよ。そんな結婚、一条くんになんのメリットもないじゃない！」
　峯岸さんが必死に訴えるが、絢斗は冷ややかに返した。
「部外者の君にとやかく言われたくない。僕の婚約者を侮辱してただで済むと思ってる？」
　絢斗の目が鋭く光っているのを見て怖くなったのか、彼女はわなわなと震えながら弁解した。
「わ、私はあなたのためを思って言ったのよ！」
「僕のため？　僕の婚約者を侮辱するのが？　余計なお世話だよ」
　身体が凍りそうなほど冷たい声だった。
　絢斗……すごく怒っている。