恋なんてしないと決めていたのに、冷徹御曹司に囲われ溺愛されました
もうここに戻ることはない。
 踵を返して帰ろうとしたら、誰かに背後から口を塞がれ、驚きで思わず目をカッと見開いた。
「よくも俺を警察に引き渡してくれたな」
 耳元に響く憎悪に満ちた低い声を聞いて背筋が凍った。
 鮫島……!
 もう釈放されたの?
「警察のすきをついて脱走してきたんだが真っ直ぐにここにきて正解だったぜ。お前をどうしてくれようか?」
 脱走……? まるで悪夢を見ているかのようだ。
 最悪の事態に身体がブルブル震え出した。
 油断していた。まさかここに現れるなんて……。
「お前を味わってから風俗に売り飛ばしてもいいな」
 鮫島の生暖かい息が首筋に当たり、恐怖を感じた。
「う……うっ」
 助けを呼ぼうとしても口を塞がれていて、叫べない。
 ならばと、手を振り上げて抵抗しようとしたら腕を押さえられて防がれた。
 絶体絶命――。
 人気のない脇道に鮫島が私を引きづっていく。
 どんなにもがいても彼から逃れられない。
 
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