恋なんてしないと決めていたのに、冷徹御曹司に囲われ溺愛されました
その奥へ行くと神社があって、呼吸するのを忘れそうなくらいパニックになっていた。
 このままだと私……鮫島に襲われる。
 誰か……助けて。誰か……。
 絢斗!
 彼の顔が頭に浮かび、心の中で必死に叫ぶ。
 ここにはいないとわかっているのに、声だって出せないのに、助けを求めずにはいられなかった。
「うっ……い……や!」
 渾身の力を振り絞って鮫島の脇腹を叩くが、彼は顔をしかめただけであまりダメージを受けていなかった。
「暴れるな!」
 鮫島が怒って私に向かって拳を振り上げる。
 殴られる!
  咄嗟にそう思って目をギュッと瞑ったら、「うっ!」と鮫島の呻き声がして、誰かに抱き寄せられた。
「美鈴! 大丈夫か!」
 絢斗の声がして目を開けると、彼が私の顔を心配そうに覗き込んできて、思わず彼の腕をギュッと掴んだ。
「絢斗……」
 来てくれた。私……助かった?
「もう大丈夫だから。どこも怪我してないか?」
「大丈夫」
 それだけ答え、大きく息をする。

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