恋なんてしないと決めていたのに、冷徹御曹司に囲われ溺愛されました
 目の前には鮫島が転がっていて菊池さんが彼の背中を「こらこら動くな」と言って足で踏みつけていた。
 ふたりが現れなかったらどうなっていたか。
「絢斗……どうしてここに?」
「警察から鮫島が脱走したって連絡があって、美鈴は今日保育園に寄るって言ってたから妙な胸騒ぎがして来てみたんだ。無事でよかった」
 絢斗が安堵した様子で私を強く抱きしめる。
 彼の温もりが伝わってきて、ホッとしたのか不意に身体から力が抜けた。
「あっ……」
「危ない!」
 崩折れそうになる私を抱き上げ、絢斗は近くに停まっていた社用車に乗せる。
「警察が来るまで休んでいよう」
 彼の言葉に「うん」と頷いて車のシートに持たれたが、外にいる鮫島が視界に入ってきて落ち着かない。
 そんな私の状況を察したのか、隣に座っていた絢斗が私を抱き寄せた。
「もう大丈夫だから、あいつのことは気にしなくていいよ」
 車内に運転手さんがいたが、絢斗にずっと抱きついていた。
 
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