恋なんてしないと決めていたのに、冷徹御曹司に囲われ溺愛されました
 彼の言葉を聞いて目頭が熱くなった。
 そんな風に言われたのは初めてだ。
 自分の容姿は嫌いだっただけに衝撃的だった。
「……もう役目は終わったので美鈴なんて呼ばないでください」
 涙を堪らえようと彼に冷たい態度で接する。
「恋人を演じた仲なんだ。下の名前で呼ぶくらいいいじゃないか。どうしてレンタル彼女なんかしてるの? 美鈴なら一流企業に勤めててもおかしくないのに」
「あなたには関係ありません! 私がどこでなにをしようが私の勝手です。シャンパン、お代わりください」
 グラスを差し出してお代わりを要求すると、彼がシャンパンボトルを手に取って注いでくれた。
 あの一条くんにこんな口の聞き方するなんて自分でもなにかおかしいと思ったが、彼は特に怒らずどこか楽しげに注意する。
「さっきみたいな飲み方はしない方がいい」
「わかってます!」
 彼の物言いが気に入らなくて、ムッとして返す。
 その後、スープ、メインの牛肉の赤ワインの煮込み、デザートなどを食べたが、頭がボーッとしてきて、一条くんとなにを話したのか覚えていない。

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