恋なんてしないと決めていたのに、冷徹御曹司に囲われ溺愛されました
2、副社長秘書のお迎え
『ない、ない、ない!』
帰りのホームルームが終わり、ある女子学生が通学バッグの中を漁りながら騒ぎだした。
『昨日買ったばかりの『リリー』の財布がない! あなたが取ったんでしょう、芹沢さん?』
 財布をなくした女子学生が私を責める。
『わ、私じゃありません!』
 彼女の財布なんて知らないし、人のものなんか取らない。
 なのに彼女の友達も一緒になって私を犯人扱いした。
『芹沢さんの家、貧乏だもんね。お昼休みにこっそり盗んだんじゃないの?』
『私じゃない!』
 必死に否定する私を周囲のクラスメイトが蔑むように見ていて辛かった。
 そこへ生徒会室にプリントを取りに行っていた一条くんが、教室に入るなりこの状況を見て顔を顰めた。
『これは一体なんの騒ぎだ?』
『佐藤さんが自分の財布を芹沢さんがお昼休みに盗んだって騒いでて……』
 近くにいた男子生徒の説明を聞いて、一条くんはきっぱりと言った。
『芹沢さんは盗んでない。昼休みは俺たち生徒会役員と一緒にこのプリントを準備していた』
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