恋なんてしないと決めていたのに、冷徹御曹司に囲われ溺愛されました
 叔父にまず謝ると、歩をギュッと抱きしめた。
「美鈴、遅いよ。でも、僕、おじさんとちゃんとお留守番してたよ」
 歩がクスッと笑ってどこか誇らしげな顔をする。
「うん。歩すごいね でも、お姉ちゃんはダメダメだね」
「そんなことない。美鈴はいつも頑張ってるよ。偉いね」
 歩がよしよしと頭を撫でてくれて、目頭が熱くなった。
「お前たちラブラブなのはいいが、急げよ。今日月曜だろ?」
 私と歩のやり取りを見ていた叔父に声をかけられ、歩の抱擁を解いた。
「あっ、そうだった。叔父さん、本当にありがと」
「美鈴、行く前に残りの料金」
 私に手を差し出す叔父を見て「あっ!」と変な声を上げる。
「……忘れた」
 そうだった。お金もらわなきゃいけなかったのに……。
 でも、回収になんて行けない。一条くんに会いにいけるわけがない。
「叔父さん、ごめん。猫カフェ、当分ただで働くから」
 手を合わせて謝ったら叔父はフッと笑って私の頭をクシャッとした。
「気にするな。元々お前に無理なことを頼んだ俺が悪い。それに……まあそのうち回収できるさ」
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