恋なんてしないと決めていたのに、冷徹御曹司に囲われ溺愛されました
どこか企み顔で微笑む叔父の言葉を聞いて首を傾げた。
「そのうち回収できるって言った?」
「なんでもない。こっちの話。ほら時間ないぞ」
トンと背中を押され、「あっ、うん」と曖昧に返事をして歩を連れ、今度は電車で家に帰る。
 まずシャワーを浴びて、再び歩を連れて家を出ると、弟が私をじっと見て言った。
「そういえば、美鈴、赤いコートは?」
「あっ、……ホテルに忘れた」
 あまりに気が動転してて寒さにも気づかなかった。
 休日にでも取りに行かないと。
「大丈夫? 風邪引くよ」
 心配しそうに歩が見つめるので明るく笑って見せた。
「大丈夫。お姉ちゃん、身体だけは丈夫だから」
 ガッツポーズまでしたが、一度意識してしまうとコートなしでは寒い。
「昨日の夜はご飯なに食べたの?」
 保護者としては叔父がなにを食べさせたのか知りたくて尋ねたら、歩が珍しくにんまりした。
「叔父さんが、お寿司屋さんに連れてってくれた」
「ああ、回転寿司」
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