恋なんてしないと決めていたのに、冷徹御曹司に囲われ溺愛されました
「うん、まあそんなとこ」
 うちの副社長とホテルにいました……なんていくら親友でも言えない。
「おはようございます。芹沢さん、今日十一時からシンガポールとオンライン会議ってメール来てましたよ」
 向かい側の席にいる木村くんがニコッと挨拶するので、微笑み返した。
「了解」
 なにがあっても仕事は待ってくれない。
 私たちの部署は原油を産油国から買って、それを日本に輸送する手配をしている。
 私と木村くんは買った原油の輸送の詳細を詰めていくオペレーター。どの船に積むとか、品質管理について指示を出す。
 ちなみに咲は産油国と原油取引を行うトレーダーだ。
 トレーダーとオペレーターが協力して業務が進められる。
「芹沢さん、ちょっと顔色悪くないですか?」
 木村くんがじーっと私の顔を見てそう尋ねるので、苦笑いして返した。
「ちょっと二日酔いみたいで頭痛がするんだよね」
「美鈴がお酒飲むなんて珍しいわね。頭痛いならこれ飲みなさいよ」
 咲がデスクの引き出しから頭痛薬の箱を取り出し、私に手渡す。

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