恋なんてしないと決めていたのに、冷徹御曹司に囲われ溺愛されました
「ありがと」と礼を言って早速薬を飲むと頭痛が収まってきた。
 仕事に追われ一条くんのことは忘れていたが、一息つこうとすると、ついつい彼のことを思い出してしまう。
 今、会社にいるけど、朝起きた時は一条くんとホテルにいたのだ。
 今でも夢じゃないかって思う。
 頭痛もなくなったし、余計に信じられなくなってきた。
 平穏な日常に戻ったってことだよね。
 一条くんは遠い世界の人。もう話をすることはない。
 ホッと胸を撫で下ろし、またいつも通り打ち合わせやメールの処理をしていると、あっという間に定時の午後六時になった。
 今日こそは余裕を持って歩を迎えに行こう。
 そう決意しながらパソコンの電源を落とし、デスクの上の書類を片付けていたら咲に肩を叩かれた。
「美鈴」
「うん、お迎えだよね。わかってる。今日はこれで帰るよ」
 てっきり歩のお迎えを気にして肩を叩いたのかと思ったら、彼女は小さく頭を振った。
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