恋なんてしないと決めていたのに、冷徹御曹司に囲われ溺愛されました
ああ、やっぱり彼も高校時代の他のクラスメイトと同じだ。私のことを軽蔑している。
「叔父に頼まれて仕方なくやったんです」
「これ、美鈴が忘れて行ったコート。ホテルの部屋にクローク札が落ちてたから俺が代わりに受け取った。かなり高級なものだけど、男に買ってもらった?」
 一条くんがデスクの下から紙袋を出して、中に入っていた赤いコートを私に見せた。
 母の形見だけれど、もうなにを言っても信じないだろう。
 この流れだと首確定だ。
「男に買ってもらったと言えば満足しますか?」
 自暴自棄になってそう言い返したら、彼が私を蔑むように見て告げた。
「そうなんだ? そんなに高級品が好きなら、一年間、美鈴と専属契約をしよう。また家族に見合いを勧められるだろうし、新たな恋人役を探すのは手間だからね」
「お断りします。他を探してください」
 きっぱり断るが、彼は諦めない。
「お金ははずむよ」
 一条くんの言葉を聞いて、ズキッと胸が痛んだ。
 お金のためならなんでもする女だと思ってる。
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