恋なんてしないと決めていたのに、冷徹御曹司に囲われ溺愛されました
先週の月曜日、うちの社長である俺の父が『次の日曜日、見合いを設定した。商船会社の社長令嬢だ。会ってこい』と俺に命じた。
 基本的に見合いは全部断っていたのだが、俺も二十七になったこともあり、父は今回引かなかった。
 今回の見合いで決まらなくても、そろそろ俺に結婚してほしいと思っているのだろう。
 だが、俺には結婚する意思がない。
 両親は政略結婚で互いに恋人がいて、互いの利益のために夫婦をやっていた。母親は俺を出産した後、これで一条家の嫁としての義務は果たしたと言わんばかりに父と家庭内別居。俺の世話も乳母に任せきりだったから、母親に抱きしめられた記憶がない。
 父は仕事や愛人との逢瀬で忙しく、大人になるまでまともに会話をしたことがなかった。
 そんな両親も俺がアメリカ留学中に離婚。
 愛のない家庭で育ったから結婚なんてしたくもなかったし、俺の名前だけ聞いて群がってくる女どもに辟易していた。
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