恋なんてしないと決めていたのに、冷徹御曹司に囲われ溺愛されました
『目ぼしいのがいないな』
『だったら、これは? 俺の友人が一番の推しって言ってきたんだ』
 拓真が手を伸ばしてスマホを操作し、LINEのやり取りの画面を出してある写真を見せた。
 髪の長い女性が猫を抱っこしてブラッシングしている写真。
 なぜかその女性だけカメラ目線ではなかった。
 だが、俺はその写真を食い入るように見つめる。
『芹沢……美鈴?』
 腰まである長い髪。
 ブランデー色をした綺麗な瞳。
彼女はメガネをしていたはず……と思ったら、一緒に写っている猫がメガネを悪戯していて、芹沢美鈴で間違いないと思った。
 弾けるような笑顔で写っているその透明感のある美しい女性は、俺の高校の同級生だった。
 外部から編入試験を受けて入った生徒で、頭がよく、テストでは毎回学年のトップファイブに入っていた。
 真面目で、休み時間も参考書を読んで勉強している物静かな子だった。
 俺が生徒会の役員をしていた時は生徒会の仕事も手伝ってくれたし、勉強がわからなくて困っている生徒がいれば誰でも教える優しい女子生徒。
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