恋なんてしないと決めていたのに、冷徹御曹司に囲われ溺愛されました

レンタル彼女をやっているのなら、この程度の触れ合いは慣れていると思ったが、彼女はギョッとした顔をした。
『ええっ、それは困ります！』
　彼女の反応を見て逆にこちらが困惑したが、表情に出さずに返した。
『オーナーの了解は得ていますし、今回の依頼に百万円支払う契約になっています』
『ヒャ……百万！』
　お金の話をしても彼女は驚くだけで、喜ぶ様子はない。
　俺の母親のように金に目がない女なら目を輝かせるのになぜだ？
　恋人役に難色を示す彼女に接触も最低限にすると伝えると、見合いの時間が迫ってきたので名前の呼び方について口早に言った。
『僕は綾乃と呼びますので、綾乃さんも僕のことをアヤトと呼んでください。綾乃さんは僕に合わせてくれればいいですから。では、そろそろ時間ですので行きましょう』
　彼女はまだ躊躇しているが構わずその手を掴む。
『さあ、行くよ。綾乃』
　見合いなんてただただ面倒でしかないのに、この状況を俺は楽しんでいた。
　俺に手を掴まれただけで、美鈴は顔を赤くしている。