恋なんてしないと決めていたのに、冷徹御曹司に囲われ溺愛されました
5、彼女と彼女の弟
「ありがとうございました」
美鈴を診てもらうために呼んだドクターを見送ると、自分の寝室に戻った。美鈴は俺のベッドで寝ていて、その傍らで歩くんが椅子に座って彼女の手を握っている。
 今日は高輪のホテルで午後八時まで会合があって、その後社用車で自宅マンションに帰宅途中だったが、スマホでメールをチェックしていたら、ショートメールが入った。
 ……知らない番号。
 迷惑メールかと思って削除しようとしたら、文面が見えてハッとした。
【こんばんは。歩です。美鈴が熱が出て寝ています。病院にも行ってくれません。助けてください】
 子供のイタズラだとは思わなかった。
 病院にも行ってくれないというのが美鈴らしいと思ったし、彼女の弟に会ってみて大人を困らせることをするような子に見えなかった。
【いまからおうちにいくからまってて】
 歩くんは漢字も読めるようだが念のため、ひらがなで返事を送る。
『すまないが行き先を変更してくれ』
 
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