恋なんてしないと決めていたのに、冷徹御曹司に囲われ溺愛されました
「ご飯は食べた?」
「食べた」
「お風呂は?」
「まだ」
「じゃあ、リビングでテレビ見よう。その間にお風呂沸かすから」
 歩くんの手を握り、リビングに連れていく。
 彼は手にリュックを持っていた。
 彼らのアパートを出る前に俺が着替えを持ってくるように言って用意させたのだ。
「お兄さんのお家、全部大きいね」
 七十インチのテレビやレザーのソファセットを見て彼は目を丸くする。
「自分の家だと思っていいよ」
 ソファに座らせてテレビをつけ、とりあえずネット配信のアニメを見せる。
「見たいアニメがあったら、このリモコンで変える」
 歩くんにリモコンの操作方法を教えると、俺はバスルームへ行き、風呂の準備をした。
 それから、タオルや歯ブラシ、それにドライヤーを用意し、寝室に美鈴の様子を見に行く。
彼女は肩で大きく息をしながら寝ていた。
 今の俺には彼女の額の汗をタオルで拭ってやることしかできない。
 後で彼女を起こして薬でも飲ませるか。
 
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