恋なんてしないと決めていたのに、冷徹御曹司に囲われ溺愛されました

身体が小さいせいか、ちょっと寂しそうに見えた。
　冷蔵庫からオレンジジュースを出して歩くんに出す。
「よかったら飲んで。ねえ歩くん、どうして僕に連絡くれたの？」
「叔父さんは夜はどこかに遊びに行っちゃうから、あと連絡できる人ってお兄さんしかいなくて。お兄さん、美鈴を優しい目で見てたから助けてくれるかなって」
　俺を見つめるその目はどこか憂いがある。
　彼には父親も母親もいない。
　美鈴だけが彼の唯一の家族。彼女と歩くんの境遇を思うと、身につまされる。
「連絡をくれてありがとう」
　歩くんの頭を撫でると、彼は小さく微笑んだ。
「来てくれてありがとう」
　真っ直ぐ見つめてくる彼を見ていると、守らなくては……と思える。
「今日のあの男の人、よく来るの？」
「うん。美鈴に『金を返せ』って言うんだ。でも、僕はなにもできなくて……」
「お姉さんを守ってたじゃないか。普通なら怖くて怯えるだろうに、歩くんは偉かったよ」
「もうあのおじさん来ないよね？　お巡りさんに捕まったから大丈夫だよね？」