恋なんてしないと決めていたのに、冷徹御曹司に囲われ溺愛されました
歩くんに聞かれてどう答えていいか迷った。
 警察に連行はされたが、刑務所に入ったわけではない。すぐに保釈される可能性がある。
「ここにいれば来ないよ。あのおじさんはこの家を知らないからね」
 俺の説明を聞いて彼は独り言のように呟いた。
「……確かに」
 なんだかこの子、俺に似てる。
 見た目より大人びていて、物静か。
 子供らしい反応をする時もあるけど、周りを見てじっくり考えて行動する。
「さあ、もうお風呂が湧いたと思うから入っておいで」
 歩くんをバスルームに連れていき、シャワーの使い方を教えるが、少し不安になって尋ねた。
「ひとりで入れる?」
「大丈夫。シャワーの使い方も習ったし。お風呂も大きくてキレイだね。美鈴が見たらビックリするよ」
 お風呂を見ても驚いてそんな発言をする彼に、フッと笑みを浮かべて言った。
「お姉さんはまず起きたら、違う家にいるからビックリすると思うよ」
「うん。きっとビックリするね」
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