恋なんてしないと決めていたのに、冷徹御曹司に囲われ溺愛されました

　ニコッと笑う彼を見て、ちょっと安心した。
　あんな怖い目に遭ったのに笑えるのなら大丈夫かな。
　ショックで夜眠れないかもしれないという不安もあったが、彼は強い子なのかもしれない。姉を守ろうと男に噛み付いた子だ。
　歩くんがお風呂に入っている間に、ゲストルームの布団を整え、拓真に連絡を取った。
「あの後どうなった？」
　前置きなく聞くが、いつものことなので拓真は淡々と答える。
《警察にいろいろ事情を聞かれたが、まあ見たことだけ話しておいた。警察の話ではあの男、他でも金を騙し取っていたようだし、すぐには出て来れないだろう》
「そうか。ご苦労だった」
《明日はどうする？　予定ずらすか？》
　拓真が秘書らしく俺を気遣うが、断った。
「いや、スケジュール通りでいい。美鈴たちのことは実家のお手伝いさんに頼むから」
《了解。まあ、いくら男が警察に捕まったからといってあのアパートに住み続けるのは危険だ。しばらくお前の家で面倒みるんだな。社員寮を調べてみたが、今は空きがない。じゃあ、また明日》