恋なんてしないと決めていたのに、冷徹御曹司に囲われ溺愛されました
 いくら五歳とはいえ、彼のこともちゃんと尊重する必要がある。勝手に物事を進めるのはよくない。
「うん。美鈴、熱あるもんね」
「お姉さんがちゃんと薬を飲んで寝るよう見張ってほしいんだ。歩くんはどこで寝る? お姉さんと一緒だと風邪が移るかもしれない。別の部屋に布団を用意したんだけど」
 そんな話をして、リビングの隣にあるゲストルームに連れていく。
「ここにひとりで寝られるかな?」
 シングルベッドが置かれているだけの、殺風景な部屋。
 考えてみたら、子供が遊べるようなものがなにもない。
 せめて猫か犬でも飼っていればよかったな。
 本とか揃えるか。
 少し不安だったが、歩くんはとことこ歩いてベッドに腰掛け、俺に目を向けた。
「うん。僕お泊り会にも行ったことあるから。それにモモがいる」
 くまのぬいぐるみを俺に見せて大丈夫だとアピールする。
「もし寂しくなったらお姉さんのいる部屋においで」
 優しく声をかけ、ベッドに横になる歩くんに布団をかけてやる。
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