恋なんてしないと決めていたのに、冷徹御曹司に囲われ溺愛されました
 スーッと寝息が聞こえる。
 まつ毛がクルンとしていて、頬がふっくらしていて……。
 見てるこっちが癒やされる。
 まさに天使の寝顔。
 歩くんの額に手を置き、「おやすみ」と告げ、ゲストルームを出て俺の寝室に行ったら、うっすら美鈴が目を開けた。
「一条……くん? 歩……歩は?」
「大丈夫だよ。別の部屋で寝てる。汗いっぱいかいたみたいだから着替えよう」
 美鈴に手を貸して服を脱がせると、彼女の身体のに汗を拭う。
 多分普通の状態だったら拒否されただろうな。
 このやり取りも朝起きて覚えているかどうか……。
「はい、じゃあこれ着て」
 美鈴の頭に俺の長袖の黒いシャツを被せるが、「う……ん、だるい」といってなかなか袖を通さないので、俺が着るのを手伝った。
 歩くんの方が手がかからないな。
「あと、薬飲まないといけないから、これ飲んで」
 セリー飲料を渡そうとしたら、これもすんなり飲んでくれなかった。
「……食べたくない」
 駄々っ子のような態度の彼女に厳しく言う。

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