恋なんてしないと決めていたのに、冷徹御曹司に囲われ溺愛されました
「ダメだ。これ以上悪化したら、歩くんが心配する」
「でも……食べたくない」
「だったら、口移しで食べさせるけどいい?」
 意地悪く言ったら、彼女は俺の手からゼリーを飲みチビチビと飲み始めた。
 熱に浮かされているが、理性はまだあるらしい。
 それから薬を飲ませ、美鈴を寝かせる。
「明日……会社……」
 ポツリと呟く彼女に強く言い聞かせる。
「仕事の心配する前に、自分の身体の心配すること。美鈴は頑張り過ぎなんだよ」
「だって……頑張らないと……倒れちゃう」
 頼れるのは自分だけ。それに弟がいる。
 これまでひとりでがむしゃらに頑張ってきて……。
「それは違う。美鈴の場合は、頑張りすぎるから倒れるんだよ」
 彼女や歩くんを見ていると、胸が痛くなる。
 美鈴の頬に手を添えてそう言うと、彼女はうちろな目で俺を見た。
「一条く……ん」
「今はなにも考えず寝ること」
 美鈴の額に軽くキスをする。
「……ありがと」
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