幼なじみ
健悟が帰ると、

「俺さ、父親がいないんだ…」

佑典は何故か、自身の話をしだした。
いがぶしげな喜々良を、

「まあ、最後まで聞いて。
ききちゃんの話と繋がるから」

佑典はなだめ、再び、自身の話を始めた。

佑典の父親は、佑典が4歳の時に、病気で亡くなった。
それからは母親の梨絵が、女手一つで佑典を育ててくれたわけだが、梨絵は助産師で、遅番や夜勤がある。
そんな時は、梨絵の兄が、家に来て、佑典を見てくれた。

「叔父も、俺が中学に入ったら、家に来なくなったけど、去年、久しぶりに家に来て、彼女が出来たと言うんだよ。
だけど、どちらかと言うと、叔父は彼女よりも、その人の中学生の娘に興味があったみたい」

徐々に喜々良の表情が曇っていく。

「俺の叔父は、馬島(まじま) 高雄。
叔父がしてしまった事については、俺から謝る。
本当にごめん」

佑典は深々と喜々良に頭を下げた。
< 20 / 48 >

この作品をシェア

pagetop