アイドルが彼氏になったら

上手くいかなかった仕事のせいで
気持ちは沈んでいたが、

ユジュンの声を聞いたら急に力が抜けて安心した

緊張感のある案件、
失敗はできないという気負い
解放されて突然涙があふれた

泣くつもりはなかったのに…
こんな事くらいで泣く私じゃないのに…

ユジュンの声は心を裸にする力が
あるのかもしれない

知られないように声を出さずに涙を流し、電話を耳から離した
早く落ち着かなきゃ!焦るほど涙が溢れる

パサッ





背後から突然大きくて暖かい
何かに包まれた

この匂い…
顔を見なくてもわかる

 「1人で泣かないで」

耳元で優しく囁く

「ビックリした。
 なんでいるの? 
 瞬間移動したの?」

ひどい鼻声だった

 「今日どうしても会いたくて
  待ってたの」

ユジュンの着るコートに包まれる

「暖かい」

「こんなに遅い時間なのに。
 ユジュンも疲れてるのに…」

「でもありがとう… 
 今すごく会いたかった」

 「だと思って迎えにきたよ」

 「僕が足りなくなってたでしょ?」

言いながら照れている

コートの中の私を回転させて向かい合う
ユジュンは大きなフードを目深に被り
眼鏡をかけ変装している

よく考えたら私はすっぴん&涙で
顔がボロボロ
恥ずかしく手で顔を覆う

「見ないで」
 
ユジュンが私の手をどけようとするが抵抗した

「見ないでひどい顔なの」

彼が強引に手を下におろす
手を離してくれないから顔を下に向けた

 「こっちを見て」

恐る恐る見上げる
いつもの可愛い笑顔のユジュン

 「綺麗だよ、何も心配いらない」

そう言って私の手をグッと引き寄せ
優しくそっとキスをした

壊さないよう慎重に…
そんな感じのキスだった

 「しょっぱいね」

笑いながら私の手を自分の腰に回した


コートで私をすっぽり包んでもう一度キスをする


今度は強く激しく私の内側を全部さらっていく

お互いおでこを付け、
息継ぎをしながら何度も何度も重ねた

 「大丈夫だよ、心配ないよ」

キスの合間に言ってくれる魔法の言葉

「会いたかったんだから」

お返しに伝える

私たちのしょっぱいファーストキス
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