アイドルが彼氏になったら
上手くいかなかった仕事のせいで
気持ちは沈んでいたが、
ユジュンの声を聞いたら急に力が抜けて安心した
緊張感のある案件、
失敗はできないという気負い
解放されて突然涙があふれた
泣くつもりはなかったのに…
こんな事くらいで泣く私じゃないのに…
ユジュンの声は心を裸にする力が
あるのかもしれない
知られないように声を出さずに涙を流し、電話を耳から離した
早く落ち着かなきゃ!焦るほど涙が溢れる
パサッ
・
・
・
背後から突然大きくて暖かい
何かに包まれた
この匂い…
顔を見なくてもわかる
「1人で泣かないで」
耳元で優しく囁く
「ビックリした。
なんでいるの?
瞬間移動したの?」
ひどい鼻声だった
「今日どうしても会いたくて
待ってたの」
ユジュンの着るコートに包まれる
「暖かい」
「こんなに遅い時間なのに。
ユジュンも疲れてるのに…」
「でもありがとう…
今すごく会いたかった」
「だと思って迎えにきたよ」
「僕が足りなくなってたでしょ?」
言いながら照れている
コートの中の私を回転させて向かい合う
ユジュンは大きなフードを目深に被り
眼鏡をかけ変装している
よく考えたら私はすっぴん&涙で
顔がボロボロ
恥ずかしく手で顔を覆う
「見ないで」
ユジュンが私の手をどけようとするが抵抗した
「見ないでひどい顔なの」
彼が強引に手を下におろす
手を離してくれないから顔を下に向けた
「こっちを見て」
恐る恐る見上げる
いつもの可愛い笑顔のユジュン
「綺麗だよ、何も心配いらない」
そう言って私の手をグッと引き寄せ
優しくそっとキスをした
壊さないよう慎重に…
そんな感じのキスだった
「しょっぱいね」
笑いながら私の手を自分の腰に回した
コートで私をすっぽり包んでもう一度キスをする
今度は強く激しく私の内側を全部さらっていく
お互いおでこを付け、
息継ぎをしながら何度も何度も重ねた
「大丈夫だよ、心配ないよ」
キスの合間に言ってくれる魔法の言葉
「会いたかったんだから」
お返しに伝える
私たちのしょっぱいファーストキス