目の上の義母(たんこぶ)
「…うん」


そのドリンクを受け取る。


「ちゃんと、いい奥さんしてるんだな」

「…えっ?」


わたし、晴馬に結婚したなんて、まだひと言も話してな――。


「それ。つけてるから」


わたしが思っていたことが、顔に表れていたのだろうか…。

キョトンとするわたしに対して、晴馬は自分の左手をかざすジェスチャーをしてみせた。


…あっ、指輪。


なぜだかわたしは、とっさに右手で左手の薬指を隠す素振りをした。


見られて恥ずかしいものではないのに、なぜそんなことしたのか…自分でも不思議だった。



「家に旦那さん残してるから、早く帰らないといけない?」

「べつに、そういうのじゃないけど…」


旦那じゃなくて、義母がいるから。


そして、そのあと自然と晴馬の左手の薬指も気になった。
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