断罪された公爵令嬢は元婚約者の兄からの溺愛に囚われる
7.不穏な動き
皇城、ジャック皇太子殿下の私室では、側近のヨルダンと内密な話をしていた。
「――なんだと」
鋭い眼光でジャックが側近へ聞き返すと、それに動じず冷静な態度で言葉を紡ぐ。
「噂の源を影に探らせていますが、既に噂が広まってしまっている状態です」
「影からの報告が遅くなるなんて、皇族の仕業か……?」
「それも調査中ですが、恐らくその通りかと」
視線で人を殺せそうなほどの怒りを眼に宿したジャック皇太子殿下は、まるで悪役のような表情で呟いた。
「ヴィーが隣国の王女を殺しただなんて噂が流れるなど、腹わたが煮えくりそうだ」
「早急に対応いたします」
「いや、それはいい。俺が指揮をとる」
側近のヨルダンは、恭しく跪く。ジャック皇太子殿下は、立ち上がり私室を出て、闇へと消えた。