断罪された公爵令嬢は元婚約者の兄からの溺愛に囚われる

「両陛下、皇太子殿下にご挨拶を申し上げます」
「よく来たね、ヴィクトリア」

 鍛えられたカーテシーを披露すると、皇帝陛下らが労ってくれる。座るよう促されてから、ふかふかの椅子に座った。和やかな雰囲気で晩餐会が始まる。

「もう聞いているとは思いますが、あと数日でイーサンが、辺境の地から帰ってきますのよ。きっとヴィクトリア嬢に似合う強き男になっているでしょう。ヴィクトリア嬢のティアラ姿が今から楽しみですわ」

 皇后陛下がご機嫌に婚約式の話題を出す。ティアラは、皇族しか被れない、頭飾りだ。王族の象徴と言われている。

 すると、ジャック皇太子殿下が幸せそうなお顔で、言葉を紡ぐ。

「何だかイーサンが居ないから、僕達が結婚するみたいだね」

「ねっ」と、アイコンタクトをしてくるジャック皇太子殿下が神々しすぎて、目眩がしてくる。イーサン殿下ではなく、ジャック皇太子殿下が、婚約者だったらよかったのに。

 でもそんなに世の中上手くはいかないもの。ジャック皇太子殿下は、隣国の王女様と婚約しているのだ。本当に羨ましいけれど、目と目があったら、失神しそうなほど、美麗だから、仮に婚約者になったとしても、きちんと正しい皇太子妃になれる気がしない。

 そんなふざけた事を考えながら、表情には出さず、晩餐会は、滞りなく終わった。
 次の日からは、想像通り、婚約式の準備で忙しくなった。そのため、ジャック皇太子の覗きは出来ず、婚約発表パーティーを迎えることとなった。
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