断罪された公爵令嬢は元婚約者の兄からの溺愛に囚われる

2.婚約発表パーティー


「ヴィクトリア、君との婚約は破談とさせてもらう」
 
 本日正式に私の婚約者となるはずだった、第二皇子のイーサン殿下の口から残酷な言葉が紡がれる。
 
 我々の婚約発表パーティーの最中、男爵令嬢であるリリアン様の肩を抱いて登場したかと思えば、強い目線でこちらを睨んでいらっしゃる。
 招待した高位貴族が、まるでショーを見るかのように、声を潜めて、器用にざわめく。
 
 婚約発表の主役しか白いドレスを着てはいけないというマナーがあるのに、リリアン様の衣装は、ホワイトで統一されている。しかも王族しか許されていない、私が頂くために作られたティアラを被って。
 
 破談にするならば、婚約パーティーの前に内々で決めて欲しかったと、ため息をつきそうになるけど公爵令嬢としてのプライドが許さず、必死に飲み込む。
 
 扇で口元を隠して、どうしたものかとお父様とお母様の方を目線だけで様子を伺うと、二人とも怒りに震えてた。両陛下は青ざめている。なんていう事でしょう。
 
「おい、無表情女。何か言ったらどうなんだ」
「イーサン、あまり威圧したらヴィクトリア様が可哀想ですわ」
「あんな女に気を使うなんて、リリアンはまるで女神のようだな」
 
 軍人として磨かれたイーサン殿下は鋭い目でこちらを睨みつけてくるが、リリアン様には優しげに目尻が下がる。
 
 ――婚約者になるわたくしですら呼び捨てを許されたことがないのに。というか軽くも深くも関わったことがないわね……。

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