【改稿版】明日はキミのために泣きたくない。

◇やっぱり君が、



少し蒸し暑くなってきたある日のこと。もうすぐ帰ろうとしていた時にスマホの通知音がした。
[ごめん、当務になった。 朝陽]
 当務ってことは、明日の8時半まであるってことだ。仕事だから仕方ない。だけど、今朝話をしたことを思い出して切なくなる。
『今日頑張れば旅行だなぁ。ちゃんと準備しておけよ』
『うん! 楽しみだね!』
 前から計画していた旅行だったけど、まぁ仕方ない。頭ではわかってるんだけど残念な気持ちは拭えない。
「はぁーあ……楽しみだったんだけどなぁ」
 なんて呟きながらわがままなんて言うことができるはずもない。だから理解のある彼女らしく、[わかった。仕事頑張ってね]と返信をした。
その後の授業は耳に入らなくて、当てられても答えられなくて……散々だった。
「千紘、大丈夫? なんかあった?」
「あっ……大丈夫だよ。菜央、今日部活じゃないの?」
「今日はオフだよ〜! 千紘、体調悪い?」
「体調は全然大丈夫! じゃあ、どっか行かない?」
 朝陽のことは、忘れよう。今日は菜央とどこか行こう!
「じゃあさ、駅前のカフェいこーよ! リニューアルオープンしたらしいよ」
 久しぶりに彼女の提案に頷いた。


 
「ん〜お腹いっぱい。」
 話してすぐにカフェに直行して一時間くらい並び、やっと席に座れた私たちはドリンクとパンケーキを注文して話をしていた。
「今からどうする……?」
「私はね、(りょう)がここまで来てくれるらしいから待ってようかなって」
 綾というのは菜央の彼氏で写真で見たり話を聞いたりはあるけど、実際には一回も会ったことはない。
「じゃあ私も待ってるよ。菜央の彼氏さん拝見してから帰るね」
「え〜千紘の彼氏がかっこ良すぎるから、うちの彼氏普通だよ?」
普通って……自分の彼氏なのにそんなこと言っちゃうんだ。
「悪かったな、普通で。」
「げ!? 綾、いたの?」
 綾さんは突然現れて菜央の頭をポンと叩く。
「いたっ」
「お前が普通とかいうからだろ、全く……」
 ふふっ、仲良しなんだなぁ。なんか羨ましい。
 同じ制服を着て過ごせるっていいなぁって思ったりしてしまうのは、ないものねだりなんだろうな。
「あ、あのはじめまして。私、千紘です。」
「あ……こちらこそ、いつも菜央がお世話になってます。高橋(たかはし)綾です。」
 確か菜央と同じ部活って聞いたけど、確かに体育会系って感じで体つきは逞しい。
「私、お邪魔しちゃうといけないから退散しますね! じゃあ、菜央と高橋くんまたね。」
「邪魔じゃないけど、また明日ねー!」
 私は歩き出し振り向けば2人は手を繋いで反対方向へ歩いていった。楽しそう……いいなぁ。せっかく一人だし寄り道して帰ろう。
「いらっしゃいませ〜」
 私はよく来る喫茶店に来て、いつものミルクティーを頼む。美味しいんだよねぇ。
「ミルクティーお待たせ致しました」
「佐和さん! 久しぶりですね」
「うん、今日は彼いないんだね?」
「お仕事になっちゃったみたいで……」
 仕方ないよね。きっとこういうのが高校生同士のカップルとの違いなのかもしれない。
「そっか、ゆっくりしていってね。」
「ありがとうございます」
 喫茶店を出ると、たまたま一緒になったお父さんと歩いて家に帰った。普通にご飯を食べて、お風呂に入って、今ベッドの上。寝れないし、寂しい……と思いながら目を瞑った。


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