【改稿版】明日はキミのために泣きたくない。
第2章
◇応時くん
朝陽と別れて1ヵ月――
あれからスマホには沢山の着信にメールが来ていたけど無視をし、会わないように時間をずらし朝は早起きして帰りは遅く帰宅していたりした。
朝陽は社会人だから忙しく、顔を合わせる時間はなくなり……会わなくなり、それからは連絡も来なくなった。
分かってくれたんだろうと思いたい。
「千紘ちゃん、今から暇だったりする!? 」
席替えしてから仲良くなった絵里(えり)ちゃんが授業が終わった途端聞いてきた。
「え……私?」
「うん! あのね、合コンセッティングしたんだけどさ足らなくて」
合コンか……私には縁ないと思ってたけど、この際行ってみようかな。
「大丈夫だよ。」
朝陽のこと、忘れられるかもしれないし。
「本当に!? ありがとう、じゃ行こう!!」
絵里ちゃんに連れられてやってきたカラオケには、私と絵里ちゃんの他に女の子が3人と男の子も5人いた。
「じゃ、自己紹介!! 俺、応時亜樹です、人数合わせで呼ばれました……あ!! 」
この人も人数合わせなのか、イケメンなのに。でも、どこかで……会ったことあるような……?
「桜林さんだよね!? 桜林千紘さん!」
「……? はい、そうですけど……」
なんで、私の名前……知って……。
「俺、保健室で会いました! 手当てしていただいたんですが覚えてないですか!? 」
手当て……?
「亜樹、抜け駆けか〜?」
「ちげーし! 本当に会って……」
「あ、あの……亜樹くん。後から話しましょうか。まだ皆さん自己紹介してないようですし」
私と彼は人数合わせ要員なのにベラベラ話すぎだ。みんなに睨まれそう……
「ちなみに、私は桜林千紘です……よろしくです」
自己紹介も忘れずに言った。名前はちゃんと言わなきゃだし。
「……千紘ちゃん! 隣いいかな!?」
自己紹介が終わると、亜樹くんが隣にやってきた。
「ど、どうぞ……」
「千紘ちゃんって彼氏、いたよね? なんで、別れたの? 」
「えーっと……すれ違い、かな」
「そうなんだ、社会人だったもんね〜……あのさ、もし良かったら俺、立候補していい?」
亜樹くんは、急に真剣な顔をしてそう言った。
「え、あ、あの……何に、でしょうか」
「……彼氏に、です」
彼氏かぁ……もし付き合ったら、朝陽を忘れられるかな?
「彼氏のこと忘れられないのは分かってる、だから俺が忘れられるように好きになってもらえるように頑張るから」
「……あの、みんないるんだけど」
全員がこっちを見ていてすごく恥ずかしい。
「え!? やばっ! 恥ずかしい!! 」
応時くんは、明るくて面白い人なんだなぁって思う。
「……まぁ、亜樹だしいっか。だって亜樹、桜林さんのこと─︎─︎─︎」
「ばっ! 言うなよっ……!!」
応時くんは顔を真っ赤に染めて、「千紘ちゃん、なんもないからね!」なんて言った。何にもない、って……意味がわからないけど。
「千紘ちゃん、連絡先教えてくれない?」
「いいですよ」
「やった!! ありがとう!!」
なんか、本当にワンちゃんみたい。耳と尻尾が見えるよ。私はスマホを取り出してアプリの自分のバーコードを出すと、応時くんはそれを読み取ってもらう。
「きたよ〜ありがとう」
「後で何かメッセージください、スタンプでもいいんですけど……」
「今から送ります! ちょっと待ってください!! 」
反応が大きいなぁ。かわいい……母性本能がくすぐられる。
「千紘ちゃん、何か頼む? ……って馴れ馴れしかったよね!?」
「あ、大丈夫です千紘で」