【改稿版】明日はキミのために泣きたくない。
それから、時は経ち……4月─︎─︎私は、大学生になりました。
「千紘〜!」
「菜央、今日は1コマ空きなの?」
私と菜央は学部は違うけど同じ大学に通っていて、今でも仲良しだ。
「次の時間は、千紘と同じ講義だよ〜」
「あれ、そうだったけ?」
「そうだよ〜」
大学の教育学部の棟にある講義室一ーAへ向かう。もうすぐ一コマ目が終わるから外で待機だ。
「菜央は何やってんの?」
「ん〜レポート! やるの忘れた〜」
「また? 今回の多いやつだよ、今からの教授厳しいじゃん」
「そうなんだけど……」
仕方なく彼女に自分のレポートを渡した。
「始まるまで返してよ」
「うんっ、ありがと!」
そう言った菜央は、ものすごい勢いで描き始めた。
それから十分くらいで講義室からぞろぞろと学生が出てくると、「千紘」と呼ばれる。
「あっ! 亜樹、この講義だったんだ」
亜樹とも同じ大学で、経済学部。高校の時も人気だった彼も大学生になり少しは落ち着いたと思う。
「そうだよ、今日はもう終わりだから……ご飯行ける?」
「え、終わりなの!? お昼は食べれるよ、いつものカフェテリアに行くね」
大学生になって彼のことを“亜樹”と呼ぶようになり、亜樹も私のことを“千紘”と呼び捨てで呼ぶようになった。少し親密感が増した感じだ。
「うん。待ってるね」
亜樹は友達に呼ばれ「今行くー」と大声で叫ぶ。亜樹の周りには本当に人が多い。当たり前のように女の子もいるけど……
「千紘」
「ん?」
髪にキスをすると友達の方に走っていってしまった。
「相変わらずラブラブだね〜」
「そんなことないけど」
「愛されてるね、こんな人前でさ〜」
それは否定できない……毎日毎日、“好き”を伝えてくれるからすごく嬉しい。
だからもう、前のように朝陽のことを思い出すことも『朝陽だったら』と思うこともなくなっていた。