【改稿版】明日はキミのために泣きたくない。
第3章
◇当たり前が当たり前じゃなくなることもある
あの後、亜樹に打ち明けると「俺はそばにいたいよ」と言ってくれて……何だかすっきりした。そして今日は、2年記念日デートの日。
「亜樹、ごめん! 待った?」
「今来たところだから大丈夫だよ」
なのに、私……遅刻してしまいました。それなのに亜樹は優しい……今来たところって嘘でしょ。
この人いつも時間遅れたりしないもん。
「……ありがと」
「全然いいよ、それよりも早く行こ! プラネタリウム」
プラネタリウムは、電車に乗って三十分の駅前の科学館の中にある。いつも大人気の施設で、前売り券も買えないくらいだったのに……ネットでも購入出来るようになって一ヶ月。とうとう買えた。
「念願のプラネタリウムだね、よかったよね買えて……」
「うん! 本当楽しみ!」
科学館に着きプラネタリウム館に入ると、テレビで見た機械とか色々あってすごく興奮して……席に座ると、アナウンスが鳴りすぐに投影が始まった。
プラネタリウムが終わり、いつもの様にランチを食べ……少しブラブラして。
「もうそろそろ帰る?」
「うん、帰ろっかな……」
最近夜遅く帰ること増えていたし、たまには早く帰らなきゃと思って電車に乗った。
地元に着くと「送るよ」と亜樹が言ってくれたから甘えることにした。
「ありがと」
「うん……」
帰る途中、何か火事の様な臭いがして鼻を抑えた。
「どっかで火事かな」
「そんな感じの匂いするね……どこだろ」
あと少しで家に到着するという時─︎─︎─︎……。
見えたのは、いつもの白くて大きい家じゃない。真っ赤に燃える、変わり果てた私の家だった。
「千紘ちゃん!? 良かった無事で……お母さんは? 無事?」
私は、あと数メートルしかない家の近くに走った。近づくと、三軒先のおばさんが私に話しかけてきた。
「私、今帰ったところで……おばさん、お母さん見てないんですかっ?」
「私も見てなくて…… ─︎─︎って、千紘ちゃん!」
亜樹の声も、おばさんの声も、周りの人の声も聞こえない。お母さんは、この中にいるの……?
どうしよう、どうしよう……。私、どうしたら……いいの……っ
「君っ! 危ないので退いてください。今、消防の人が来ますので、お下がりください」
消防の人……でも、お母さんが家の中にいるかもなのにっ……。
「……中に、母がいるかもしれないんですっ! だからっ」
「だけど危険なんだ」
警察官は正当な言葉を並べ、私に何か言っているけど……私は冷静になんてなれない。
だれか、だれか……助けて。