【改稿版】明日はキミのために泣きたくない。
◇一つの区切り
『言わなきゃ、伝わらないよ。自分の気持ちを隠しても、相手には何も伝わらない。』
山内さんが帰ってからずっと考えていた。思い返してみれば、朝陽に何も伝えていなかったかもと思えてくる。
自分は『好き?』と聞いておいて、朝陽に好きだと気持ちを伝えてなかった。
朝陽が私じゃない人が好きでも、伝えるべきだったかもしれない……。
「私……朝陽と亜樹どっちが好きなんだろう……」
なぜか分からない。はっきり、亜樹のことが好きだと言えるのかな。
山内さんの言葉でこんなにも揺れてしまうだなんて……このまま亜樹と付き合っていていいのかな。
[話がしたいんだけど、時間あったりするかな?]
迷いながらも亜樹に送った。けど、山内さんの過去には驚いたし結婚してたなんて……山内さんは乗り越えれたのか。
すごいなぁ。スマホを握っていたけど一度テーブルに置いて冷たい麦茶を取りに行って戻ると、もう返信が来ていた。
[明日の夕方なら大丈夫だよ]
[じゃあ、カフェテリアで待ってるね]
そうメッセージを送ると、スマホの画面が見えないようにテーブルに伏せた。朝陽が起きるまでテレビを見たりレポートをやったりして過ごした。
夜ご飯を食べ終えた頃……。
【着信:お父さん】
お父さん……? なんだろう?
『もしもし』
『あ、千紘? あのね、いいお知らせあるんだ。実はね、家が決まった』
『えっ!? 本当!?』
家決まった……良かったぁ。ここにいるのは気まづいし本当に良かった。
『あぁ、後で地図送るよ』
『うん、ありがと』
『朝陽くんに変わってくれる?』
お父さんに言われ「お父さんが変わってって、はい」と朝陽にスマホを差し出した。スマホを受け取った朝陽は『変わりました、朝陽です─︎─︎─︎』と応えた。朝陽がやろうとしていたコーヒーを淹れると、テーブルに持っていく。
朝陽はブラック、私はミルクたっぷりのカフェオレ。
「……はい、千紘。良かったな家見つかって、引越しの手伝いを頼まれたよ」
「えっ、でも引越しの手伝いをするほど荷物ないんだけど……燃えちゃったし」
そんなにないというか、ほとんどない。服は二着くらい買ったけど部屋着は朝陽に借りたし実質は大学の教科書とかノートパソコンとかなんだよね。