ただいま配信中!~年上幼馴染は人気Vtober~
Vtober・IZU
鳴瀬 羽奈、中学二年生。
現在、大ピンチの状況に陥っています。
「あー、ごめんな、親が開けちゃったみたい。うん、もう大丈夫」
私の視線の先で椅子に座って、ノートパソコンの画面に向かって、にこやかにそう言ったのは、やわらかな茶髪の猫っ毛をした男子。
私はその様子を、じっとして見守るしかない。
心臓がばくばくする。胸から飛び出しそうだ。
「でも今日はちょっと音響が良くないから、音質がいつもより劣るかも。悪いけど許してくれよな!」
そこで、ちらっと彼から私のほうへ視線がやってきてどきっとした。
部屋のすみに座った姿勢で、ぱっと口をふさぐ。
こくこくとうなずいた。
(大丈夫。静かにしてます)
彼はその様子を見て満足したように、にこっと笑う。
私の胸はまたどきんと跳ねたけれど、ちょっと恐ろしくもなった。
変な音を立てたりしたら、怒られてしまうだろう。
いや、怒られるどころじゃない。
配信を見ている視聴者に「同じ家に女の子が暮らしている」と知られてしまうかもしれない。
それは彼にとっても私にとっても、だいぶ困ることなのだ。
私は心臓をばくばくさせながら、視線の先でにこやかにトークをしている彼・志摩 出雲くんを見つめているしかなかったのである。
なにしろ今、この出雲くんは、出雲くんであって、出雲くんではない。
私の部屋という場所で、ノートパソコンに向かってにこにこトークをしている彼は、中学生Vtober。
『IZU』という名前のアバターに入っている彼は、中高生の女子に大人気なんだから。
現在、大ピンチの状況に陥っています。
「あー、ごめんな、親が開けちゃったみたい。うん、もう大丈夫」
私の視線の先で椅子に座って、ノートパソコンの画面に向かって、にこやかにそう言ったのは、やわらかな茶髪の猫っ毛をした男子。
私はその様子を、じっとして見守るしかない。
心臓がばくばくする。胸から飛び出しそうだ。
「でも今日はちょっと音響が良くないから、音質がいつもより劣るかも。悪いけど許してくれよな!」
そこで、ちらっと彼から私のほうへ視線がやってきてどきっとした。
部屋のすみに座った姿勢で、ぱっと口をふさぐ。
こくこくとうなずいた。
(大丈夫。静かにしてます)
彼はその様子を見て満足したように、にこっと笑う。
私の胸はまたどきんと跳ねたけれど、ちょっと恐ろしくもなった。
変な音を立てたりしたら、怒られてしまうだろう。
いや、怒られるどころじゃない。
配信を見ている視聴者に「同じ家に女の子が暮らしている」と知られてしまうかもしれない。
それは彼にとっても私にとっても、だいぶ困ることなのだ。
私は心臓をばくばくさせながら、視線の先でにこやかにトークをしている彼・志摩 出雲くんを見つめているしかなかったのである。
なにしろ今、この出雲くんは、出雲くんであって、出雲くんではない。
私の部屋という場所で、ノートパソコンに向かってにこにこトークをしている彼は、中学生Vtober。
『IZU』という名前のアバターに入っている彼は、中高生の女子に大人気なんだから。
< 1 / 59 >