ただいま配信中!~年上幼馴染は人気Vtober~
「だから情感込めて弾いてほしいっていうか」

 なのに出雲くんは、普通に話すのだからずるいと思う。

 私はもうまともに聞けないほど、どきどきして緊張しているのに。

「わ、わ、わかった!」

 なんとか返事をしたけれど声はとうてい落ち着かず、跳ね上がってしまって、また自分で恥ずかしくなった。

「なに? そういう部分じゃないとか?」

 しかし私のその言い方は誤解されてしまったようだ。

 出雲くんは不審そうで、かつ心配そうな声で言う。

 私はぎくっとした。

 誤解されてしまった。

 よって胸のどきどきは治まらなかったけれど、なんとか言った。

「そ、そうじゃないよ! 感情込めて弾いて大丈夫!」

 半ば叫ぶようになってしまった。でも一応、私が肯定したのは伝えられた。

「ならいいけど……」

 不思議そうな声のままだったけれど、一応納得してくれたようだ。

 私はほっとした。

 なのに、今回もすぐに破壊された。

 それどころか数秒しかほっとしていなかっただろう。

「羽奈」

 うしろから出雲くんの声が聞こえる。

 それはいい。うしろにいるのだから近くて当然だ。

 問題は今までより、さらに近かったということだ。

 もはや耳元にも近いのではないかと思うくらい。

 耳に息がかかるように感じたのは、錯覚だったのか、本当だったのか。
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