ただいま配信中!~年上幼馴染は人気Vtober~
「取らないなら俺が決める。これだろ」

 私が嬉しくなっていつつも、まだ手が伸びないのにじれたのか、出雲くんはひとつを取って差し出してきた。

 私はそれを見て、目を丸くした。

 だってそれはピンク色のドーナツに、白い猫が入っているものだったのだから。

「え、なんで?」

 びっくりした。まさかこの中で、一番食べたかったものを差し出してもらえるなんて。

「なんでって……お前、いちご味が好きじゃん」

 なのに出雲くんは、しれっとそう言う。

 まるで『私のことはなんでも知ってるから』と言いたげな口調。

 私の胸が、かっと熱くなった。

 いちご味が好きなんて子どもの頃の話なのに、覚えていてくれたんだ。

 それにもうひとつ。

「それからその猫。みゃうちゃんに似てるなって思った」

 白い猫。

 昔、私の家では猫を飼っていた。

 私が生まれる前から飼っていたというその子は、みゃうちゃんという名前で、このドーナツに入っているのと同じ、真っ白な毛並みをしていた。

 もう数年前に死んでしまったけれど。

 出雲くんはそれも覚えていてくれたんだ。

 もっと胸が熱くなる。

「……うん。ありがとう」

 いい意味で胸と頬がほてりながら、やっと手を伸ばして受け取った。

 いちご味のお菓子。

 とてもおいしそうである以上に、あったかいものがたくさん感じられた。
< 26 / 59 >

この作品をシェア

pagetop