ただいま配信中!~年上幼馴染は人気Vtober~
 もうお菓子どころじゃなかったのに。

「ほい」

 ふと、混乱した私の前になにかが差し出された。

 私はきょとんと目をまたたく。

 それはひとかけら取られたチョコレート味だった。

「え……?」

 出雲くんが食べていたものの一部、何故かちぎって差し出されているけれど、一体どうして。

 意識が空白になったのだけど、出雲くんは眉を寄せた。

「いらねぇの?」

 いらない……?

 え、つまり、私にくれるって……?

 そこでやっと差し出されている意味を知って、私はさっきと同じくらい顔が赤くなるのを感じた。

 しかもくれるだけじゃなくて!?

 出雲くんがつまんで差し出してくれてるのを!?

 そんなの……そんなの、恥ずかしすぎるのでは!?

 内心、叫んでしまった私だけど、出雲くんがそこでもうひとつ眉をしかめる。

「いらないならいいけど……うまいのに」

 そう言われてハッとした。

 そうだ、出雲くんは私を気づかって、分けてくれようとしているのだ。

 それなら「いらない!」なんて言うほうが失礼だ。

 恥ずかしい、けど。

 そう思ってくれる気持ちはとっても嬉しい。
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