ただいま配信中!~年上幼馴染は人気Vtober~
「い……ります」

 ごく、と喉が鳴ってしまった。

 でもなんとかそう答えて、そっと顔を近付けた。

「なんで敬語なんだよ」

 出雲くんが苦笑するのがわかったけれど、それどころではない。

 お菓子に顔を寄せると、ふわっと甘い香りがした。

 いちご味とは別の、こっくりしたチョコレートの香り。

 私はその香りに誘われるように、おそるおそる、ぱくっとそれを食べていた。

 甘い匂いが、口の中いっぱいに広がる。

 すごく濃厚で優しい甘さを持っていた。

 とても幸せな気持ちになりかけたのに。

 ちょん。

 不意になにかがくちびるに触れた。

 もぐもぐ食べながら、私は目を丸くしてしまう。

 出雲くんがお菓子をつまんでいた指で、ちょん、と私のくちびるに触れてきたんだから。

 今度こそ私はフリーズした。

 噛んでいた口も止まってしまう。

 きっと目を白黒させていたのだろう。

 出雲くんはその私を数秒見つめて……何故か、ぷっと噴き出した。

「そんな目を真ん丸にしなくていいだろ」

 言われてもう一度、かぁっと顔が熱くなる。

 触れる必要なかったよね!?

 からかったの!?

 恥ずかしさと混乱に私は戸惑った。
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