ただいま配信中!~年上幼馴染は人気Vtober~
「ん、紅茶、なくなっちまった。淹れてくる。お前は?」

 私がフリーズしているうちに、出雲くんはお菓子をぺろっと食べてしまった。

 ティーカップが空だったから、そう言って立ち上がる。私を見下ろしてきた。

 視線が合って、たったそれだけだというのに私の心臓は、どきんっと跳ねあがった。

「えっ! あ、い、いい……、まだあるし」

「そう」

 なんとか返事をした私。

 出雲くんはふっと笑って、そのままリビングを出ていった。

 ぱたんとドアが閉まって、私はそろそろっと力を抜いた。

 ふーっとため息が出る。

 一体なんだったんだろう。

 お菓子を分けてくれると言ったのも。

 食べさせてくれたのも。

 指だけど、くちびるに触れられてしまったのも。

 おまけに私のことを、かわいいって……。

 ……どういうこと!?

 私は真っ赤になった顔のまま、とにかく気持ちを落ち着けようと、ぱくっといちご味のお菓子に噛みついていた。

 大きく噛み取ったお菓子はやっぱりふんわり甘かった。

 でもさっきのチョコレートとは違う味で。

 当たり前のことなのに、本当になんでだろう。

 少し物足りないように思ってしまった。
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