英雄となった騎士は置き去りの令嬢に愛を乞う
「順番が前後しましたが、誓いのキスをしてもよろしいでしょうか、お嬢さま」
「は、はい」

 誓いのキス、という言葉に思わず頬を染めた瞬間に、温かい唇がシャーロットの上に落ちてくる。触れただけの唇に、思わず寂しさを感じてしまいヴィクターを見上げると、彼は耳を真っ赤にしていた。

「そんな、煽るような顔をしないでください」
「煽るような顔って?」

 顔をかしげると、ヴィクターはくっと口を引き締めて再びシャーロットを引き寄せた。

「ここでこれ以上触れるわけにはいきませんので、奥の部屋へ行きましょう」
「えっ、ええっ?」

 ヴィクターはシャーロットを横抱きして祈りの間を出ると、別宅の奥へ急ぎ運んでいく。普段から客を迎える別宅には、寝台のある部屋が用意されていた。






 普段は表情の読みにくいヴィクターだが、今はこころを浮き立たせて喜んでいるのがわかる。ここで、とシャーロットに伝えると明るい客室の扉を開けた。そこには大きな寝台が一つ置いてある。

 シャーロットを寝台の上に優しくおろしたヴィクターは、朗らかな顔をしながら騎士服の上衣を脱ぎ始めた。下には簡易な白シャツを着ている。

「先ほどは飾りがあたってしまい、申し訳ありません」
「えっ」

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