英雄となった騎士は置き去りの令嬢に愛を乞う
 二人はことばを失くし、身体を寝台に横たわらせた。弾む息を落ち着かせながら肌を合わせ、天井を見上げる。

 シャーロットはヴィクターを身体に受け止め、二人は想いを分かち合う。くぐもった声を唸らせたヴィクターは、最後に突き上げるように動くと欲望を全てシャーロットの中に吐き出した。

逞しい腕に抱き寄せられ、頭を胸のところ乗せるとトクトクトクとヴィクターの心臓が早打ちしている。

「ヴィクター……」
「愛しています」

 心地よい体温に包まれていると、瞼が重くなっていく。疲れた体をそのままに、シャーロットは意識を手放した。





 暁の光が山々を照らしている。窓から入ってくる一筋の光に眩しくなり目を開けると、隣には愛しいシャーロットが眠っている。

「ようやく、手に入れることができた」

 しなやかな青銀の髪を一筋とって口元に運ぶ。どうしても彼女が欲しかった。自分を薄汚い孤児院から連れ出し、仕事と教育を与えてくれた。彼女が自分を選んでくれなければ、有り余る力を何に使っていたのかわからない。

 いつしか、眩しいばかりの美少女を手に入れたいと願ったが、伯爵令嬢を娶る道は限りなく細かった。その細い道を突き進むために騎士となり己を磨いた。運もあって、英雄と呼ばれる程に戦果を挙げることができたのは幸いだった。

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