英雄となった騎士は置き去りの令嬢に愛を乞う
 黄金の光を見ながらヴィクターは、シャーロットの頬にふわりと唇を乗せると、ぱちりと瞼が開かれ紅の瞳がこちらを見る。あぁ、この色が欲しかった。

「ヴィクター……」
「おはよう、シャーロット」

 小鳥のさえずりのような声を聞きつつ、香りだけを身に着けた彼女を眺める。寝顔も飽きなかったが、やはりくるくると動く表情を見ると愛しさがこみあげてくる。今ならどんな敵でも倒すことができそうだ。

「あっ」
「シャーロット、どうした?」
「だって、昨日まで私、あなたのことを諦めなきゃって思っていたのに。こんなことになるとは、思っていなかったから……」

 混乱する様子のシャーロットの青銀の髪を撫でながら、ヴィクターは目を細めた。

「そういえばマリア様は大丈夫なの? 私たち、身体を繋げたから、その、もう結婚を取り消されることはないの?」
「あぁ、大丈夫だよ。マリア様はもう、この旅が終われば隣国に嫁ぐことが決まっている。パレード中は、何かあれば俺が身代わりとなるために近くに寄っていただけだ」
「そ、そうだったの……、私あなたに目を逸らされたと思って」
「シャーロット。君の瞳を見てしまうと護衛に集中できなくなりそうで、つい顔を背けてすまなかった。マリア様にも揶揄われてしまったよ」

 ヴィクターはシャーロットを安心させるように、額にキスをした。

< 13 / 14 >

この作品をシェア

pagetop