英雄となった騎士は置き去りの令嬢に愛を乞う
毎回苦労して出入りしているが、開かなかったことはない。ようやく入ることのできたシャーロットは、光の差し込む窓の近くへ行き、日を浴びながら立膝をついて手を組んだ。
「神様、ヴィクターが無事、生きて戦場から戻ることができました」
しん、と静まり返った空間にシャーロットの声が響く。
「でも今日で、彼のことを祈るのは最後にします。どうか、……どうか、彼が幸せな日々を過ごすことが出来ますように」
きっとパレードが終わったら皇都へ帰り、噂通り皇女マリアと結婚するのだろう。もう、彼の姿を見ることもない。孤児である彼にとって、ここケンドリッチに帰って来ても家族もいないのだ。
(もう、ヴィクターのことは忘れなければ)
シャーロットはこれから先のことを考えると、深いため息しか出てこない。
父親には、今すぐにでも結婚するように言われている。二十一歳という年齢は、貴族令嬢としては売れ残りになる一歩手前だ。いくら輝くように美しいシャーロットであっても、結婚相手を選ぶことができなくなる。
「ヴィクター……」
目を伏せてため息をついたところで、後ろに人の気配がする。扉が開く音もしなかったのに、誰か入って来たのだろうか。
だがシャーロットが振り返った刹那、そこには思いもよらない人物が立っていた。
「お嬢さま」
「ヴィクター、どうしてここに!」
「神様、ヴィクターが無事、生きて戦場から戻ることができました」
しん、と静まり返った空間にシャーロットの声が響く。
「でも今日で、彼のことを祈るのは最後にします。どうか、……どうか、彼が幸せな日々を過ごすことが出来ますように」
きっとパレードが終わったら皇都へ帰り、噂通り皇女マリアと結婚するのだろう。もう、彼の姿を見ることもない。孤児である彼にとって、ここケンドリッチに帰って来ても家族もいないのだ。
(もう、ヴィクターのことは忘れなければ)
シャーロットはこれから先のことを考えると、深いため息しか出てこない。
父親には、今すぐにでも結婚するように言われている。二十一歳という年齢は、貴族令嬢としては売れ残りになる一歩手前だ。いくら輝くように美しいシャーロットであっても、結婚相手を選ぶことができなくなる。
「ヴィクター……」
目を伏せてため息をついたところで、後ろに人の気配がする。扉が開く音もしなかったのに、誰か入って来たのだろうか。
だがシャーロットが振り返った刹那、そこには思いもよらない人物が立っていた。
「お嬢さま」
「ヴィクター、どうしてここに!」