英雄となった騎士は置き去りの令嬢に愛を乞う
 目を見開いたまま動きを止めたシャーロットに近づいてくるヴィクターは、パレードで見た時と同じ白い騎士服を着ている。手を伸ばせば触れる位置まで来た彼は、シャーロットと向き合い彼女を高い位置から見下ろした。

「約束通り帰ってきました」
「約束、って。ヴィクター」

 シャーロットは緋色の瞳を潤ませながら見上げると、目尻から涙が一粒零れ落ちていく。

「ヴィクター!」

 シャーロットが近寄ると、ヴィクターは口角を上げて目を細め、両手を広げてシャーロットを抱きしめた。ヴィクターの厚い胸元に顔を埋め、手を背に回す。頬に勲章の飾りが当たり、カチリと音がする。

「ヴィクター、ヴィクター!」
「シャーロットお嬢さま」

 とめどなく流れる涙をそのままに、二人はことばを失くして抱擁する。ヴィクターは片手をシャーロットの後頭部に回すと、優しく髪を撫で始めた。

「もう、お嬢さまなんて言われる年齢じゃないわ」
「俺にとっては、お嬢さまです」
「ヴィクター、でもどうしてここへ」

 瞳を潤わせたままシャーロットが見上げると、ヴィクターは精悍な顔を崩して微笑んだ。

「妻問いに来ました」
「え? つま? 妻問いって」
「はい、お嬢さまに妻問いに来ました」
「……何を言っているの?」

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