処刑直前の姫に転生したみたいですが、料理家だったのでスローライフしながら国民の胃袋を掴んでいこうと思います。
プロローグである。大概死ぬのである。


「……いったいこれは、何なの?!」


わたしは自分の状況を疑った。
両手を後ろに固定され、みの虫のようにぐるぐるに縛られ、バイク(・・・)に固定されていた。鈍色に光る大きなバイク。


――――バイク、だよね?
ブリキのおもちゃみたいな不思議な材質だけど。

ウィリーでもするかのように立てられたそれは、わたしの体より大きい。まるで十字架にはりつけにされたキリストのようだ。

ぐるりと見渡すと、わたしのいる場所は競技場のように見えた。石造りで、ローマの円形闘技場コロッセオに似ている。円形の広場の中心でわたしは拘束され、周囲には色とりどりの髪に特攻服を着込んだ男達に取り囲まれていた。

ひな壇造りの観客席があり、そこも人で埋め尽くされていた。彼らは何か口々に叫んでいた。
わたしを恨みのこもった鋭い目で睨み、罵倒するような言葉を喚いていた。それはもはや、咆哮のようだと言えるほどの迫力であった。

その人たちは全員がヤンキー(・・・・)のようにガラが悪く見えた。

「とっととやれやぁ!」

「やっちまえ!」

「制裁だーー!!」

うおりゃぁ!とか、どりゃぁ!みたいに舌を巻いて、ヤンキーもどきの男達は荒ぶっていた。
なぜ彼らはわたしに怒っているのだろう。
中には木製バットのようなものを抱えてる男もいて、あれで殴られてしまうのではないかと、恐怖で顔を引き攣らせた。

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