処刑直前の姫に転生したみたいですが、料理家だったのでスローライフしながら国民の胃袋を掴んでいこうと思います。
飯で世界征服するんですよ
目が覚めると知らない部屋に居た。
「牢屋……ではない」
手錠も足枷もない。
芋虫のように縛られてもいないし、自由だ。寝ていた場所は最高級のベッドであった。カウルやフェンなどの、位の高い人達が寝れるベッド。
てっきり裏切り者として酷い扱いを受けるのかと思っていたが、思いのほか待遇は良かった。
のそりと体を起こすと目が回った。
鼻の奥に、森でかいだ甘ったるい匂いが残っているようだ。
あれからどれくらいたった?
カウルたちはどうしてるのかな?
大きくベッドの隣には、クランクが寝ていた。
なぜだ。なぜわたしはこの男に添い寝をされているのだろう。
見張り役か?
寝ているクランクはいやみな感じはなく、ただただ神々しい。
真っ白な肌。銀の髪に、銀の睫毛が枝垂れている。
「きれー……」
寝顔をじっとみていると、クランクの瞼が動いた。
すっと開いた瞳は刺すように鋭くて、わたしは「ひっ」と悲鳴を上げた。
逃げようと思ったが、腕を掴まれる。
「寝込みを襲うつもりか? 暫く見ないうちにはしたない女になったな」
「はい?」
「それとも欲求不満か。俺に会えなかったのがそれほど寂しかったか」
(……んん?!)
頬を撫でた手が、金髪を手で梳いた。
表情も言葉もふてぶてしいが、行為は甘い。
恋人さながらの甘い雰囲気に、胸やけがしそうだった。
「ええと。クランクさん。リアとはいったいどういったご関係で……」
もうリアじゃないとバレているだろうからいいやと、腹をくくるとクランクは噴き出した。