処刑直前の姫に転生したみたいですが、料理家だったのでスローライフしながら国民の胃袋を掴んでいこうと思います。
デリクリエンツの城では軟禁、といった待遇だった。
拘束はされないが、見張りはつく。
敵国の姫という立場で、どんな仕打ちをされるのかと思ったら、意外と自由で拍子抜けをしたほどだ。
自由ではあったが、ノーティー・ワンに帰ることだけは許してもらえない。
城を飛び出してひとりで帰れるとも思えないし、クランクはことあるごとに脅してくる。
ゆえにわたしは抵抗せず大人しくしていた。
ゆっくりと、機会を探りながら助けを待つしかない。
クランクはカウルと同じ立場であった。
つまり、デリクリエンツのトップ。警備隊の総長だ。
リアはデリクリエンツ側の人間という立ち位置に見られているらしく、城のみんなもわたしの存在を煙たがらなかった。
むしろ、とうとうクランクがリアを手中に……! みたいな興奮のような感情が見える。以前、カウルより聞いたリアは敵国の男と通じていた、というのはクランクだったわけだ。
リアは一国の姫であり、さらにはとんでもない美女だ。
ノーティ・ワンでただひとりと言われる、唯一の金髪。しなやかな体。長い手足に、出るところはでて、ウエストは折れそうなほど細い。大きな瞳には、フランスドールのようなくりんと上がった睫毛。透き通る肌には、ぷるんとしたピンク色の唇が映える。
誰よりも秀でて美しかった。
デリクリエンツの権力者が、しかもあのクランクが敵国から手に入れたとなれば、湧き立つのも仕方が無いほどの絵面だ。美男美女。正直、見た目だけなら厳ついカウルより、お似合いではある。
そんなわけで、意外にも歓迎されていて過ごしやすい