処刑直前の姫に転生したみたいですが、料理家だったのでスローライフしながら国民の胃袋を掴んでいこうと思います。
草をかき分けながらぼやいていると、真後ろに足っていた見張り役のライザーが手元を覗いてきた。
ライザーは30歳くらいの筋肉質な男だ。
浅黒い肌に短髪坊主で見た目は厳つい。しかし目が糸目で随分と印象を柔らかくしていた。


出かけるときはライザーとは腰縄で繋がれており、それが動く度に擦れるものだから、骨盤があたりの皮膚がヒリヒリとする。

「ツルムラサキ見つけたって言ったの。ほらみて! こんなにたくさん生えてる!」

「なんだ。またその草かよ。毎日スープに入ってるじゃないか。食べ飽きてるんだけど」

「じゃあ今日は、天ぷらにしてあげる」

「テンプラ? 何だそれ」

「ふふ、サクサクッじゅわ~っとする食べ物! 卵はここでも貴重だから衣は小麦粉と水だけにして、油もけっこうあったし、なんとかなるかな~」

「はぁ?」

「いいからいいから。ここ一体にあるの全部摘むから、手伝って」

「なんで俺が。しかもこんなにたくさんどーするんだよ」

「だって、城のみんなの分作るんだもん。それに、天ぷらっていうのは、なぜかたくさん食べれる不思議な食べ物なんだな。どうせ見てるだけでも暇でしょ。二人でやった方が早く終わって早く城に帰れるよ」

「ちっ」

ライザーは、文句を言いながらも手伝ってくれた。
デリクリエンツの国民は恐ろしい人達だと思っていたが、ノーティ・ワンと何も変わらなかった。
クランクが美味そうだとか紛らわしいことを言うから、人間まで食糧にする恐ろしい種族かと思ってしまったじゃないか。
食べるのだけは勘弁してと訴えたらクランクにバカにされたのは記憶に新しい。美味そうの意味もわからないのかと笑われた。

食べること以外に、美味いって言葉使わないし!

精神年齢が子供だと馬鹿にされたことを思いだして、八つ当たりのようにブチブチと収穫した。
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